8日から12日まで個人的に生まれて初めて行ったSXSW2019でのレポートです。
今回はSony Wow Studioです。
https://www.sony.co.jp/brand/event/sxsw/
Sony Wow Studioここ数年出展しているそうで、今年も出展していました。
全体的な印象としては、ロボットとAIの展示+エンターテイメントという感じでした。
入ってすぐにあるのはAIBOとDas Fremdeというロボット。
特にDas Fremdeはメカメカしい外見にも関わらず前にいる人に追従するので意外と可愛らしいなと感じました。
さらに奥に入るとプロジェクションマップを活用したFlash DartsやFragment Shadowなどの体験型の展示がありました。
どれも面白い体験でしたが、今回は特にFlow Machinesに焦点を当てて紹介しようと思います。
Flow Machines
Flow Machinesは次のように紹介されています。
"「Flow Machines」はアーティストのクリエイティビティを拡張することを目指す研究開発及び社会実装プロジェクトです。"(https://www.flow-machines.com/)
Flow Machines 要するに技術が音楽制作を支援する方法を模索するプロジェクトのようですが、SXSWはそのうち中核に当たるメロディの自動作曲ツールFlow Machines Professionalのデモを行なっていました。
Flow Machines デモの内容
デモの大まかな流れは、 - Flow Machines Professional の説明をしつつメロディを生成 - 作曲したメロディを演奏してみる という感じでした。
Flow Machines Professional は、プラグイン形式になっていてCubaseなどの音楽制作ソフトに使うことができる、という説明をしていました。おそらく、パソコンで音楽している人にはおなじみのVSTプラグイン形式になっているのでしょう。 デモではCubaseを使用していました。
使い方は、コード進行を選んでComposeボタンを押すだけ! という超シンプル操作です。 デモではⅣ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅵというコード進行を選択して生成していました。 コード進行というのはいわゆる和音を並べる順番のことです。 ドから始める長調(Cメジャー)だったら、Ⅳ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅵは、
ファラド→ミソシ→ソレファ→ソレファ
という和音の順番になります。
結果がこちら。
4つメロディとそれらに沿ったコードとベース(低音部)がMIDIノートとして生成されていますね。 このメロディをさらに小節ごとに好きなものを選んで最終的なメロディにしていました。
ちなみにMIDIノートというのはドレミをどれだけの長さ鳴らすか? という音程情報などを記録したものです。 「MIDI」というとファミコンのようなピコピコ音をイメージする方もいるかもしれませんが、あれは音源の問題なので、ピアノとかアニソンとかでたまにあるギラギラしたシンセサイザーの音もMIDIで鳴らすこともできます。 なので今回はシンセサイザーの音になってますが、これをピアノの生楽器に差し替えることも可能です。
出来上がったのは実用的なメロディ
話が逸れてしまいましたが、皆さんはこのメロディを聴いてどんな感想も持ったでしょうか? 私はこれを聴いて泣きを誘うJ-POPっぽいメロディだな、と感じました。 言い換えればそのまま楽曲にりようすることもできそうな実用性が高いメロディではないかと思います。
メロディを作るなどの自動作曲はMusic Makerなどすでにあるものも多いです。そういった従来のソフトははメロディーとして破綻していないもの、やラテンっぽいものという印象を持たせることはできますが、「J-POPっぽい」そして「そのまま使えそう」と思えるようなメロディーを生成できているは結構すごいことです。
おそらく技術的にはJ-POPの楽曲を大量の楽曲をディープラーニングのRNNで学習させてその結果を出力させてるのではないでしょうか? あくまで想像ですが。
自動作曲AIは作曲の仕事をなくすのか?
今回紹介した体験展示の名前(?)は"Enjoy Co-wiriting with AI"(AIとのコーライティングを楽しもう)でした。
コーライティングとは複数人がメロディ、アレンジ、編曲(トラックメーキング)それぞれ得意な箇所を担当し1つの楽曲を作る手法のことを指します。 あまり聞きなれない言葉かもしれませんが最近のJ-POPの楽曲のいくつかはコーライティングで制作されているとも聞きます。 現在一般に販売されている曲におけるコーライティングは、人同士にはなりますがFlow Machines Professionalを使えばかなり現実的な領域でAIと人のコーライティングが可能であると思いました。
ここで注意したいのは、「AI『が』作曲する」のではなく「AI『と』作曲する」ことです。 Flow Machinesではコードの選択や最終的なメロディの決定は人が行う仕組みになっています。 そもそもFlow Machineというプロジェクト自体が掲げる通り、AIは作曲者の可能性を広げるために使われるためAIが作曲という仕事を奪うのではありません。 この話にこれ以上深入りするとだいぶ話題が変わってしまうので、ここまでにします。
ただ、数年後にはトップチャートの楽曲がほとんどAIとのコーライティングになっている、という状態もありえるかもしれません。
個人的にはFlow Machine Professionalが発売されないかがすごく気になりますけどね!!